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海程 2013年8・9月号 海隆賞・海程賞・海程新人賞

  • 2013/08/24(土) 13:28:51

海程 2013年8・9月号では、今年の海隆賞・海程賞・海程新人賞
が発表された。以下、作品抄から私の好みで各3〜10句ほど抜粋。
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■第三十七回 海隆賞 受賞作品抄より抜粋

見果てぬ夢  京武久美

つぶやきが言葉となる日冬海鳴り
夢ためて冬凪にいま漂泊す
枯るる中恋うものありてうずくまる
故郷出て鴎の空の底にいる
初蝶の気負いのなかの色気かな
ねむくなるゆうべ虹出て落ち着かず
とぶための空持てば遠客のかたつむり
生きていて雲ととぶもの探す夏
どんぐりの姿態で書く詩誰のため
芒原連れ小便をして見果てぬ夢


吾が浮巣   土田武人

冬星を一粒張ってゆく民話
寒木瓜や手のなかに嘘持ち帰る
愚痴でなくかつては繭の麻袋
十葉の匂いは薄くなる文化
薄き虹聖書を入れる箱の紐


■第四十九回海程賞 受賞作品抄より抜粋

篠田 悦子

夕東風や竃火匂うまぼろし
仔猫ぽとり独り居の水の暗さに
草木瓜の花胸熱く八十路なり
葡萄棚に夜が加わり海の深さ
こころとは器なり飯包む葉っぱ

稲葉 千尋

猪に誓られている新塔婆
枇杷の花とても素敵な小声です
鼬美し弾のかたちに素っとびて
白ほたるぶくろ生れるという兆し
ほうたるを涼しいと言い小学生

□第四十九回海程賞 候補作品抄より抜粋

まほろば 京武久美

まほろばは此岸のおごり冬すみれ
二月愛しわが色をして揺らめく雅
魂抜けるとは陽炎に魅かれること

雨音 月野ぽぽな

夏の蝶まばたきのたび空軋む
銀漢はびしょ濡れのまま街の上
旅に寝て我は一枚の雨音

声の水平 森央ミモザ

じゃんけんの声の水平冬の蝶
鳥の目と木枯しのまますれちがう
銀やんま近づく我を寂しがる
呼びかけた唇に棲む雁渡し
鶏頭花ひとりは一方的に紅く

茄子の花 前田典子

水餅を摑み出したる手に薄日
死者生者どちらがかなし茄子の花
山法師ふはりと白き父のこゑ

春の土 高木一惠
国生みの矛にもぐらの春の土
脱け殻は見えず噂のやまかがし
涅槃会の老犬は黙通しけり

青蚊帳 茂里美絵

木木芽吹くひとの遠さもひかりなり
青蚊帳にふわっと消えるからだかな
まばたきは呼吸のひとつ曼珠沙華

残る月 白石司子

花万朶これを大義というべしや
残る月私という潦
磔刑の静かなる午後冬の蝿


■第48回海程新人賞 受賞作品抄より抜粋

伊藤  巌

極月や相模の海に陽の柱
拒絶とは斯くも美し鷹やせて
寒卵母の素足の映る床
満作や野川に漬けし鍬二本
野水仙ほになる娘のよく喋る
兄の指沢蟹の子の陽に流れ
茶の花や母居ぬことを問わぬ子と
フクシマ 子の開く手の雨蛙
シャワー熱し諾えずいる娘の理由
祖母の唄いつしか瀬音霜の花


小西 瞬夏

ブラウスの少女に十一月の背骨
抱きしめて蛍をやっと産み落とす
寒紅をぜんぶぬぐってからの息
しんしんことんしんしんことり冬の蝶
淫らとは春の水をごくごく飲む
蚕児というやわらかい疵である
こぼさないでくださいたぶん春です
腐乱とは浮人形の青い錆
空耳は海月の群れの中の愛
小鳥きて昼のからだをうらがえす


□第48回海程新人賞 候補作品抄より抜粋

故郷の踊り 赤崎ゆういち

踊りつつ父母故里の闇に消え
蛇のごと泳ぎし父や陸に還る
文鎮で押さえる余生零余子飯

待合室 三好つや子

均等に折れるカッター春愁
弟のような左手さくらんぼ
馬追や待合室に歯の絵本

無縁社会 尾形ゆきお

影も罠なり春昼のドラム音
円空を問う旅夜のからすうり
無縁社会崩れる花筏何処へ

蕗茹でる 三浦静佳

母国語で歌うシンガー晦日蕎麦
ポピー咲くひらがなのよう拗ねる母
蕗茹でる父を説得するように

からから 山下つばさ

お祭の金魚のように通勤・通学
からからののどにしし座流星群
黄砂降る世にたくさんの好きな人

身をよじる 桂凛火

花びらの音聴きたくて踏みしだく
身をよじる愛なんてない虫篝
耳洗う清潔な仕事白露かな

酔うためにだけ 石田秋桜

冬の蝶ペンが止まったままでいる
産着干す春の雲にもなれそうな
蛍や酔うためだけの夜であり

奥羽山脈 新野祐子

吹雪く夜や奥羽山脈被曝なほ
背泳ぎやわが混沌を空に晒し
剥製の森の神々晩夏光

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さて、久々に拙句だが、我ながら、振り返るにやるせない。
きっと日々進歩しているのだ、昨日のズボンはもうはけない♪と
ポジティブに理解しておく。


海程495
○黒揚羽音楽祭の風に会う
 囀をメモしておいて後で泣く
 蝌蚪の群れ渋谷スクランブル交差点

 薄暑光再上映に間に合わず
 はんかちの花耳赤らめて黙す息

海程494
 不条理とうなじの藪蚊膨れゆく
 草色に染まる墓碑銘(エピタフ)黄金虫
○帰省して蛇口にうつる現実や

 人生をちぎって食べる夏の空
 流木の問わず語りに玫瑰も

海程493
 有り触れた春の日只共に在る
 雪つかむ雷鳥の脚ヴァーグナー
○薔薇の芽の密度嬉しくてせいいっぱい

 霾れり去りゆく街のアルペジオ
 今咲いた一輪の死を風薫る

海程492
○小春日や空に迷子のペルセウス
 春の星青くて古いあいことば
 啓蟄や百年後もいい匂いの空

 完成を恐れる神と冬薔薇
 水色が胸にあふれてリラの花

海程491
 生まれつき迷いの街にクリスマス
○口あけて光呼ぶ空寒気団
 受胎告知身体に森をとりこみて

 色鳥やわずかに食べて遠く恋う
 地図消えて月にこっそり笑い声

海程490 (投句を遅刻しすぎて掲載されず)
 真暗を抱きしめるよに雪化粧
 冬の虹何があっても受け入れる
 主人公いなくなっても雪解け
 灰の中無疵の未来絵空事
 福音に狂気の燠は薪を乞う

海程489
○お別れはレモン未満の笑顔かな
 コスモスの喪失感に瞬いて
 舞踏蜘蛛同心円のモノローグ

 色鳥の心めばえて羽根むしり
 オクラホマミキサー止んで極透明


で、今更ながら、ちゃんと俳句の基礎に立ち返ろうと思い直す。
切れと型式について改めて勉強する。たくさん読む。文語表記を
意識する。縦書きのメモ帳にする。
詩心を惹起するおまじないをつくる。つまり、創作のコンディション
へ速やかにシフトするスイッチを探す。

以上








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