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books reminder, 『エズラ・パウンド詩集』新倉俊一訳

  • 2012/01/03(火) 14:18:20

books reminder 『エズラ・パウンド詩集』新倉俊一訳

2012年のNewYearCardの引用はエズラ・パウンドの長篇詩集
『詩篇(キャントーズ)』第七十九篇からの引用である。



     what the deuce are you doing here?
 I beg your pardon…
"Prepare to go on a journey"
   "I…”

  "Prepare to go on a journey"
or to count sheep in Phoenician,

from The Pisan Cantos LXXIX, Ezra Pound



       一体こんなところでおまえはなにをして
         いるんだ?
 なんと?
「旅をつづける支度をしなさい」
  「はあ・・・」

     「旅をつづける支度をしなさい」
さもなくばフェニキヤ語で羊の数でもかぞえておれ


(エズラ・パウンド ピサ詩篇、第七十九篇より)



実は、NYCard2012の引用はパウンドらしい下記第七十四篇
のフレーズにするつもりだった。



       Zephyrus / Apeliota
This liquid is certainly a
       property of the mind
nec accidens est but an element
                in the mind's make-up
est agens and functions dust to a fountain pan otherwise
      Hast 'ou seen the rose in the steel dust
                  (or swansdown ever?)
so light is the urging, so ordered the dark petals of iron
we who have passed over Lethe.

(from LXXIV)


      西風(ゼピュロス)/東風(アペリオータ)
この流れは確かに
      精神に属するものだ
ただの属性ではなく 心が生みだした
             ひとつの元素だ
それは原動力でつねに動く でなければ塵が水盤に積る
     鉄粉のなかにバラを見たことがあるか
                (あるいは白鳥の綿毛を)
それを動かす力は軽く、鉄鋼の暗い花弁は整然としている
われら、レテの河を渡りし者は。

(第七十四篇より)新倉俊一訳




『詩篇(キャントーズ)』はパウンドがその生涯をかけて書き綴った
長編詩集である。第百〜百十七篇の草稿を遺した未完の大著だ。
第七十四篇〜八十四篇はパウンドが大戦中にムッソリーニを賛美
して反米反逆罪で捕らえられピサの収容所で死刑を待ちながら
書いたので『ピサ詩篇』と呼ぶ。死刑は免れピサの収容所から米国
に移送され、精神異常と決め付けられて13年間もワシントン郊外の
精神病院に軟禁された後、1958年にヘミングウェイやエリオット、
フロストらの強い働きかけでようやく釈放された。軟禁中は比較的
自由だったようで詩篇を書き続けた。釈放されたパウンドはイタリア
に戻り、そこで静かな晩年を過ごした。彼の最後の言葉は次のよう
なものだった。
「私はもう何も書かない。何もしない。私は冬眠する。そして、静かに
瞑想するのだ。」(雑誌「エポカ」のインタビュー:城戸朱里訳)

エズラ・パウンド、この偉大なる変人は詩人であり俳人でもあった。
余分な言葉を排し音楽的フレーズによる律動とともに即物的に
言葉を扱いイメージを隆起させるといったイマジズムの方針は
俳句からおおいに学んだものだ。

NYCard2012の引用は「イメージ」よりも「メッセージ」に振った。
牢屋に幽閉され追憶の連想に眠るか、否、旅を続けよう、
オデュッセウスの如く。パウンドの如く。

参考図書

『エズラ・パウンド詩集』 新倉俊一編訳
 <双書20世紀の詩人2>小沢書店 1993年

(旧版)
『エズラ・パウンド詩集』新倉俊一編訳 角川書店 1976年

『パウンド詩集』 城戸朱理訳編<海外詩文庫11>思潮社 1998年

『ピサ詩篇』 新倉俊一訳 みすず書房 2004年

原典英文サイト
http://www.scribd.com/doc/17137610/Pound-Ezra-The-Cantos

以上


pleasure vinyl 夜明けのスキャット 由紀さおり

  • 2012/01/03(火) 10:29:36

夜明けのスキャット 由紀さおり

年末年始のヘビロテ。

「ピンク・マルティーニ」版じゃなくて由紀さおりのデビュー当時の
ドーナツ盤で聞く、透き通るような歌声。声が全然ちがう。

「ピンク・マルティーニ」と由紀さおりのコラボ『1969』が米国の
iTunesジャズ・チャートで1位を獲得(11月2日付)


どれどれと『1969』のCDをゲット。うーん。

もっとアレンジされているかと思った。

「夜明けのスキャット」は好き。
でも幼いころからラジオで聞いて耳に残っている歌声となんか違う。

ということで、中古レコード屋へ。LPを買おうと思って出かけたが、
店のおじさん曰く「もう、由紀さおりなら何でもかんでも売れちゃったよ」
と最後の一枚を購入。普段なら中古100円位のドーナツ盤が当時の
倍の値段だ。

うーん。ぱちぱちノイズがすごい。盤面は綺麗なのに溝の奥が汚れて
いるのだ。こういう時は水洗いするに限る。

ちなみにドーナツ盤のジャケットの内側、デビューしたての紹介欄。
*******************************************
由紀さおりプロフィール

本    名    安田章子
出 身 地    桐生
現 住 所    川崎市市の坪334
生 年 月 日   昭和23年11月13日
趣    味    読書、日舞(花柳流)
好きなアーティスト ペリー・コモ
*******************************************
現住所まで出しちゃうんだ。
安田姉妹の童謡も好きです。

以上

綺羅綺羅してる。 キラリティのこと

  • 2012/01/02(月) 17:38:32

わたくし、ちょっと綺羅ってました。

昨年、早稲田大学の名物教授朝日先生(↓)とその仲間たちの会合にお招き
いただく機会があって、キラリティを知りました。きらきらしたネーミングが素敵です。
【早稲田大学研究者紹介WEBマガジン】第35回(08/1/15)朝日透(Toru Asahi)
朝日先生もすごく綺羅綺羅した御方です。
てなことを年末納会で話していたらご関心寄せられる方々もいらしたのでメモして
おきます。上記朝日先生のページやwiki等を参照して以下に記します。


さて、キラリティー (chirality) とは、3次元の図形や物体や現象が、その鏡像と
重ね合わすことができない性質。掌性。のこと。

キラリティがあることをキラル (chiral) という。英語の発音に忠実にカイラリティ、
カイラルともいう。これらの語はギリシャ語で「手」を意味するχειρ (cheir)が
語源である。語源のとおり、キラリティーは右手と左手の関係にたとえられる。
右手と左手はお互いに鏡に映した対称的な構造(対掌体)を持っており、
親指・小指というように構成要素は全く同じ。指の順番も同じだが、左右が
重なり合わず、機能も違う。物質の世界でも、元素構成要素はまったく同じで
それらの元素の結合順番も同じなのに、お互いに鏡に映した構造関係にある
物質(鏡像異性体)が無数に存在する。これらのキラリティーを持つ構造をキラル
な構造と呼ぶ。

キラルな構造物質には、例えば、食べたときに片方は甘く、もう片方は苦いなど、
まったく違う生理活性の性質や機能を示す場合がある。柑橘系の香料や食品
添加物として利用されているリモネンという物質もキラル構造物質。しかも左型
と右型で香りが異なり、左型リモネンはレモンの香り、右型はオレンジの香りを
持っている。

また、かつて薬禍を起こしたサリドマイドにも、R体とS体というキラリティが異なる
物質が存在する。R体には睡眠作用などの薬効がある一方、S体には奇形を
引き起こす性質を持つことが分かっている。しかし、S体を与えなければ薬禍は
起きなかったかというと、ことはそう単純ではないようで、温度やpHによってR体が
S体になってしまったりと複雑なことが起きるとも指摘されている。

サリドマイドは、日本ではその使用が長い間禁止になっていたが、ハンセン病、
エイズ、ガンなどにも薬効があると言われており、
(多発性骨髄腫に福音。サリドマイドが新たな使命を帯びて再登場)
処方を間違えると害になる薬かもしれないけれど、機序を明らかにして実用に
供せられ、難病に苦しんでいる患者を救える薬ならば、正しく用いて活用すべき
ではないだろうか。このように、薬を安全に使っていくためにもキラリティの研究
は重要となる(朝日先生とその仲間達!応援してます!)。

このようにキラリティは、その性質や活用方法の検討について、物理学・化学・
生物学・薬学と多角的に研究が展開されており、実は、我々の生活や身体に
かかわる身近なお話なのであった。

さらに、少年の眼をキラキラさせるのは、アストロバイオロジーへの展開。
<Tokyo Women's Medical University-Waseda University joint institution
for Advanced Biomedical Sciences>のページより
生体中にはL体アミノ酸からなるタンパク質、D体糖類からなるDNAしか
存在しないが(ホモキラリティの不思議)、その起源の解明に迫っている。

らしい、おもしろい。

そして、ついに!
生命の起源、宇宙から飛来か?
2010/4/6 自然科学研究機構 国立天文台

そうなの〜!?

興奮のほとぼりさめやらぬまに、そんな中たまたま読んでいた
『談』no.87 特集 偶有性―アルスの起源
に今度は長沼毅先生登場。
談 no.87 WEB版 特集:偶有性……アルスの起原
長沼毅 『必然と偶然の、その間で生き物は……』


一発でファンになり、やがてキラリティのキーワードに接続!
下記対談がわかりやすい。
『生きもののルールの探し方』
長沼 毅 広島大学准教授 × 中村桂子 JT生命誌研究館館長

この対談の「4. only oneかone of themか」でキラリティが登場します。
------
長沼
具体的にはアミノ酸のキラリティ(註11)が逆のものを探しています。
10年くらいやっていて、あと何年できるかわからないけれど、元気な
うちは探したいと思っています。

中村
地球の外なら逆のものがいるかもしれないと思いますが、地球上で
それを探す、その根拠はなんですか。

長沼
地球上での生命の発生が一回きりとは思えないのです。地球の表層
は我々の系で完全に埋め尽くされているけれど、表層でなく深いところ、
たとえば南極の氷の下には、他系統が埋もれているかもしれない。
------

これ、買いました。
『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』長沼 毅
中学生と一緒に考えます。

それから、『談』、20年来のファンですが、いつも素敵な編集です。
「書物のフィールドワーク」に参考文献も丁寧でbook guideとしてもお薦めです。
no.93 特集「他者の他者としての〈自分〉」
たのしみ。

石黒浩特別研究室


以上