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books reminder 『食卓の音楽』 新装版!

  • 2011/08/27(土) 11:26:36

杉恒夫歌集 『食卓の音楽 新装版』



幻の第一歌集、刊行より24年を経て、待望の新装版。

228首収録。各章扉に著者撮影の写真。

栞=前田雪子・永井陽子・井辻朱美・中山明

2011年9月22日発行
A5判並製カバー装154頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治

六花書林 http://rikkasyorin.com/syuppan.html

以前の books reminder 『食卓の音楽』 その一、その二 で紹介したとおり、
絶版で中古でも売っていなかった杉恒夫さんの第一歌集、ついに復刊。
ほんと幻だった。大学図書館にやっと見つけて全部ノートに筆写して腱鞘炎に
なりそうだった本。

前に紹介していない句をいくつか抄出



   くだものの皮ほぐれつつくだものの芯にサティのオルゴール鳴り


   たくさんの空の遠さにかこまれし人さし指の秋の灯台


   少しさむい春の夜だからワグナーのトランペット群ぎんいろがよい


   完全に閉じられている曲面のさびしさは卵なでていにけり


   つつかれてヨーグルトに沈む苺 やさしき死などあるはずもなく



以上

海程475号(その二)

  • 2011/08/27(土) 10:52:05

海程475号(その二)

前回(その一)に続いて、海程新人賞及び候補作品抄。
とにかく思想も詩想も豊かな詩人俳人たちででいっぱい!

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(敬称略)
<受賞作品海程掲載のためのタイトル>   氏 名
※タイトルをつけていないものもある
※ふりがなは()で表した。

■第四十六回海程新人賞作品抄 (1名)

加藤 昭子

  花柊形状記憶のよう悼み

  烏瓜生家を灯す意地がある

  冬菜畑母の記憶を侮れず

  雪玉の低めいっぱい初恋だな

  雪籠り封筒に息入れている

  放蕩の父祖の地混じる落椿

  恋人たち陽炎の準備らしい

  涙眼の表面張力猫の恋

  八十八夜溶接の火の青雫

  見上げてはマロニエという古書店主

  フランス刺繍芥子の蕾はまだ固い

  帰省子や父を跨ぎて電話取る

  ががんぼの淋しい手足エレベーター

  空蝉のカリカリ塩味に違いない

  向日葵に起爆装置のあるような

  頭の中で敗戦を詠む紫蘇畑

  南蛮煙管地霊の顔をしていたり

  強靭な首持ち白鳥着水す

  目次よりあとがきが好き木の実降る

  枯れきって自由奔放さるとりいばら



■第四十六回海程新人賞候補作品抄 (9名)

<斜影>   中内 亮玄

  氷雨という執着が降る鉄匂う

  冬月は蒼き駱駝を連れている

  雁渡し踏切に風が傷があった

  葦原へ骨まで乾く白い月

  風明らか今朝より冬となる鉄路

  寒卵ふたつ割ったしふたつ喰ったし

  行儀よく震える合唱団吹雪いて夜

  桜散る乾いた悲鳴に似ていた

  島々の羽根ぐっしょりと霧の中

  青鷺立つ干潟に舟が老いている


<柿の花>   小宮 豊和

  きさらぎという逡巡の日がめぐる

  暁闇の人おそろしき遠桜

  若く映る床屋の鏡五月なり

  初夏の顎も鳴らしてバイオリニスト

  サル目ヒト科異常増殖柿の花

  かなしみを置いて翔(た)つ帰燕もあろう

  秋草の匂いの蛇の遅鈍かな

  黄落は時を清算するように

  裏山やどんぐりならば余ってる

  並みて立つ岩も牡牛も時雨けり


<はろばろと>   小川 楓子

  沖まで来よスイートピーにむせながら

  耳たぶの穴白藤のひとひねり

  かざぐるま三日三晩の国より来

  ぼろぼろの青嵐はろばろと来ぬ

  パイナップルあかるし姉の空腹も

  一人を恋ひ月を離れるやうにゆく

  裏声の美しく来る雁木道

  わが産みし鯨と思ふまで青む

  潤目鰯とてもみじかい祈り

  毛皮着てあなたのやうなあなたに会ふ


<本能だけ>   豊原 清明

  冬の鹿少女の青い足に囲まれ

  春袷本能だけが仁王立ち

  春の雲静かに眠る子供たち

  蛍去らないあの子と握手した快感

  戻り梅雨すかーんと球の音しきり

  法師蝉おらぬ相手の為に啼く

  日記買ふ人の世に生き我は病む

  妻なしの恋なしされど良夜なり

  円周率俳句の如き火鉢なり

  初冬や逃亡兵等草に寝転ぶ


<浄化>   伊藤 歩

  岸までは誰も行かない冬林檎

  透明な血だまり残し雁帰る

  穴を出た蛇の湛える真水かな

  さみしい肉を春の夕焼け照らすかな

  半夏生閉じた傷口盛り上がる

  秋の蛾が背中に重い昔かな

  秋蜂や記憶の町に住んでいる

  鳴きながら渡る星空ピラカンサ

  冬蜂に言葉与えて放しなさい

  冬山に雲の集まる浄化かな


<冬の風鈴>   鈴木 誠

  冬の風鈴鳴り止みぬ母の死もて

  枯野来る飼われる鰐を見に来てる

  日向ぽこのうたたねは舟世にあきて

  蝶のよう背に残る羽根年老いて

  方舟を待たせ母まだ花の中

  紙風船後悔ほどの重さかな

  カタカナで来る黒東風を犀という

  蛍袋絶望一つまた入れた

  黄昏の冬の倉庫の人錆びて

  言葉を死なせる地なり霙降る


<飴玉>   佐藤 詠子

  飴玉のような欲とて夏の月

  炎昼や毒かもしれぬ息を吐く

  墓洗う逆光に在る家系かな

  終戦日誰そ行き過ぎる砂利の音

  凍鶴や君の字体が噤(つぐ)みがち

  ふくら雀一人暮らした頃の雲

  待春やコンパスで括る核家族

  秋うらら魚眼レンズのよう母性

  聖域や息子の部屋から流星群

  ボタン穴掛け違いそう冬銀河


<山蟻>   峯 純

  金輪際マスク買い足してはならぬ

  凍鶴を見にゆくギブスしたままで

  裏口は濡れているなり冬の暮

  晩春の死亡届を訂正す

  山蟻のここは寝室ここは蔵

  今生の端に金魚売を置きぬ

  心痛の果てにくるまる蝸牛

  空蝉に遠く匂える刀鍛冶

  月を癒す鉄道局へつづく径

  冴ゆる夜の裁縫箱は星ばかり


<ほんとうのさびしさ>   石田 秋桜

  春の雪空に翼があるように

  花桃に向く真っすぐな言葉かな

  うぐいすが啼きに来ている深い家

  キャッチボール父はカーブした植田

  逃げ水のあたり平均寿命かな

  澄む秋の端を頂き子守りかな

  実直に父に日暮れと田の穭

  真っ白な月さらさらと林檎剥(む)く

  白鳥の確かな距離に人を置く

  ほんとうのさびしさあおくゆきのふる


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で、久々に拙句

474
  本当はいつ本当に鳥雲に
○ 雪形に救いの記号見つけ出す
  木蓮やみんな開き直ってしまった

475
  鳥たちを匿(かくま)う大樹夏来る
○ 雲の峰地震(ない)に崩れる気配なし
  青嵐チョークの路面電車に乗る

没 
  残雪や下山しながら透けてゆく
  海市立つ知らないことを説くひとに
  さえずりや口笛真似て返事待つ
  お別れは無声映画のわたぼうし




以上

海程475号 (その一)

  • 2011/08/22(月) 22:42:13

海程475号(その一)

海程475/2011年8・9月号では海程三賞(海隆賞、海程賞、海程新人賞)が掲載された。
以下に受賞作品抄及び候補作品抄を記載する。ボリュームが大きいので、今回は(その一)
として海程賞と海隆賞を、次回(その二)で海程新人賞及び候補作品を紹介しよう。

それにしても如何だ、どうです『海程』らしいだろう。
ここにピックアップされた句だけをみても、『海程』のスケール感を展望できるだろう。
もちろん同じ俳人の句の中にも、読者によっての好き嫌いはあるだろうが。しかし、
なんか違う、と思った句でも「捨て曲」扱いしないで吟味してみると、別世界が開けるかも。


海程賞
海程461(H22年4月)号〜470(H23年2・3月合併)号に発表された同人作品を対象に
選考委員14名が選出。同人年間ベスト。

海隆賞
海程在籍25年以上の同人で一貫した句作活動を示し、海程への寄与度が高く、
かつ地域俳句界にも貢献している人。ただし、既受賞者・七十歳未満の人を除く。

海程新人賞
海程461(H22年4月)号〜470(H23年2・3月合併)号に発表された「海程集作品」を
対象に選考委員26名が選出。会友の年間ベスト。

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(敬称略)
<受賞作品海程掲載のためのタイトル>   氏 名
※タイトルをつけていないものもある
※ふりがなは()で表した。

■第四十七回海程賞受賞作品抄 (2名)

三井 絹枝

  そのままぼおっと泣きし風知草

  君に似て世のからすうりを曵きずり

  ゆらゆらすすみ蝋梅が咲きます

  灯にふれて消えそうな人マスクかな

  一人居ない晩年のさくら雨晴山(あまはらし)

  石鹼玉からころと今音のして

  この世のきれいな朧夜人もかな

  鶯に一つ叶うなら横たわり

  春寒しかさかさかさ さよさよさよ

  仏法僧一人真っ赤な音のせり

  明るさを母さまと呼び日傘さす

  諦めのこの世の柞(ははそ)いいものなり

  かさっと泣く赤子さわると蛍のよう

  干菜汁仏とわたしのあはれなり

  愉しさの細しやさしの月夜かな

  秋の蚊の仮名に変わるまで切なし

  夢というあなたの前でほととぎす

  涼しさ恥ずかしと言ういもうとよ

  蛍の帰り生きてゆくところなし

  息をして忘れていたる残暑かな



小野 裕三

  薄氷を真上から見る真顔かな

  冬木に疵小さな耳が見えました

  年神に見せる乳歯の揃いけり

  若水を飲んで一周する生家

  池普請匙が一本ありました

  ポスターの賑わっている万愚節

  跳び箱を二人で運ぶ遅日かな

  菖蒲湯を出て正体を尋ねけり

  侍をたくさん噴いて弥生山

  バスいつしか湾の向こうにさみだれる

  春雨に一つ目小僧腕洗う

  鳥の巣や姉は生来一本気

  空欄に来て立ち止まる甲虫

  炎天の端から端へ引越しぬ

  海の家野球少年覗くかな

  続報のように西瓜を割りにけり

  美術館夏の階段ゆきわたる

  朝顔の軽さで妻の座りけり

  鶏頭咲く村が凹んでいるあたり

  燕帰る長き名前の挑戦者



■第四十七回海程賞候補作品抄 (8名)

<焚火>   田中 亜美

  息絶えし馬を焚火のごと囲む

  梨腐るやうなる鬱をサルトルも

  ワイヤレスマイクの軋み兎棲む

  はつなつの繭透くやうに子の時間

  白牡丹顕れて(あれて)留め金なき世界

  セザンヌや郭公空白置きて去る

  くちなはと人売られゆく晩夏かな

  秋の暮灯のある方へ文字記す

  哺乳類マフラー首に巻き淋し

  生傷(なまきず)のごとき思想や寒の月


<薬指>   下山田 禮子

  ゆりかもめそっと一礼したような

  ふいに来て失言のよう冬の蝶

  淡交というも絆か修羅落し

  ふと目覚め寂光土とも松の内

  約束はなかったことに野火走る

  青田風やっぱり暇な薬指

  手首まで入れて身内となる泉

  露の蝶ゆれているのは生命線

  父の日はしまい忘れた服のごと

  来し方の心身の皺からすうり


<空>   佐孝 石画

  新樹らは空を歩いていたのです

  空いちまいめくり忘れて花水木

  桐の花にくしんという水辺かな

  朝顔が見ている彫りの深い風だ

  蜘蛛ひとり風のまなこを食べていた

  この霧のむこうに僕の足がある

  冬雲の一つほぐれて王となる

  冬晴れをきれいな壁と思いけり

  陽まみれの冬野に僕を置いてきた

  怒っていません粉雪は眠っています


<夕日川>   野 憲子

  落椿猪の骸でとまりけり

  よく見ればおたまじゃくしの無尽蔵

  巻貝のなかは光りの滝である

  篁(たかむら)は孔雀の調べ青あらし

  青空は疵痕ばかり蟇

  稲妻は蛇(くちなは)の足照らしけり

  満月はわが湖よ旋風

  鳥渡る波紋のなかに空也の眼

  雁や野をかき切って夕日川

  潮目には太古のひかり蒼鷹


<太郎月>   京武 久美

  はにかめばやわらかな闇冬座敷

  艶っぽい冬の風物道化てみよ

  押入れに鬼の領分太郎月

  結び目を洗えば春がやってくる

  父の系譜たんぽぽを吹き薄くする

  雲雀あがるわれのさみしさわれにかえし

  青柿が日当る渇望は猫背ほど

  蠅叩き朝の奢りに軽みあり

  老いの形(なり)空に紛れてそぞろ寒

  うそ寒のどこかがまぶし下り坂


<平凡とは>   篠田 悦子

  葱焼ける野の匂いかな 懐(ふところ)

  赤城山の風群青の葱畑

  小鳥たち飛び交う影の七草粥

  平凡とは丸いおにぎり森林浴

  雀らに陸稲(おかぼ)の日向峡も奥

  人去りて夜は川鳴る秋山家

  地(つち)を頼り水澄むおもい素朴かな

  家々の灯のひそひそと返り花

  だんまりに似た仄暗さ白山茶花

  短日や僧の母上畑に翳


<白さるすべり>   稲葉 千尋

  綿虫やふしぎと母は長生きす

  齢とは流星数え夢ふやし

  燕来るぶっきらぼうは三日ほど

  炭窯は山を離れず父はなし

  またテロが頬に飯粒つけたまま

  便器一つ白鳥ほどに光らせて

  牛蛙大念仏に出会うよう

  子猫拾う水を掬うという感じ

  白さるすべり祖は大きな波しぶき

  俳諧や粋な蟷螂枯れつくし


<茄子植える>   高桑 婦美子

  右といい左と言いて啓蟄や

  掴むとは素手の感触春浅し

  やわらかな軽い頭脳で春キャベツ

  泣くものに勝ってどうする茄子植える

  のうぜんかずら風はどこかへ行ったきり

  対岸の草の茂りを自由という

  寝返りは自由な力夏の家

  熱帯夜街に変電所が浮かぶ

  石投げて秋の深さを計っている

  秋風よむかし投石という兵器



■第三十五回海隆賞受賞作品抄

<人生不可解>   北川 邦陽

  綿虫の重力ころんだらあかん

  元日己が尿瓶洗うも自然かな

  柿干す雨中黒富士来ていたり

  去年今年母の切符を探している

  先頭は息子の大足桜鯛

  石鹸のよう少女達卒業す

  初失禁ノロノロ春の雲は行き

  夫抱かな一枚二枚はうすみどり

  麦の穂はいたくてかゆい個室の子

  ホタルイカ両掌に贅をあふれしむ

  正装し夏木立のよう整列す

  向日葵の中人間の声を出す

  男梅雨少年少女は水馬

  人生不可解金魚の糞の漂えり

  吹抜けの風鈴海のサカナたち

  ビル個々にラジオ体操して露けし

  稲田四角に四角に回り帰省せり

  事故処理の白墨消えず街湿り

  老人と金魚各階雲の中

  比良山系僧兵火焔落葉降る



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(その二)海程新人賞及び候補作品も好作でいっぱい。乞うご期待。


以上

books reminder, 『ひきずる映画』

  • 2011/08/21(日) 16:06:41


読んでみたい、というかフィルムガイドとして手元においておきたい本。
俗世の世事に追われるのは社会に生きる上で致し方ないと諦め、だからこそ、
そんな疲れた身体と心を解すべく映画館の暗がりに身を沈め銀幕に期待しようとする者に
とっては、癒しと真逆に『ひきずる映画』なんぞ、まっぴら御免蒙りたい、と思う。
だって、そんな時ぼくらは逃走したいのだから。自分から、今から、現実から、
逃げたいんだもの。
癒されない、ことへ積極的に視線を向けること。痛みを味わうみたいなそんな作業は、
普段一番顧みることの少ないモノ、他でもない自分自身を顧みることにつながるだろう。
自分自身を顧みることなく、他人と何かを分かちあうことなんて出来ない、と思うこのごろ。
やっぱり、この本読んでみようと思った。


http://www.filmart.co.jp/cat138/post_151.php
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ひきずる映画
ポスト・カタストロフ時代の想像力

村山匡一郎+編集部 編/村山匡一郎、北小路隆志、三浦哲哉、石原陽一郎、
石坂健治、杉原賢彦 著
四六判/256頁/定価:2,100円+税/ISBN 978-4-8459-1176-9

「癒し」の真逆を提示する映画から、世界の在り方と現代のリアルを読み取る!

8月22日発売
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以上

コクリコ坂 から

  • 2011/08/20(土) 14:17:58

残暑お見舞い申し上げます。






3.11のあと、みんなの気分。
ジブリ、なんてタイムリー!?




羽田からの帰り道、ベイブリッジから横浜マリンタワーに目をやれば「U・W」旗が手を振るみたいに
はためいていた。札幌。大通り公園には今もとうきびが焼かれ、空は高かった。
昨日健康診断の帰りゲリラ豪雨にうたれた。街は身を清め、クールになった。
デパートの屋上の100円の乗り物。子供だましに揺れて「もう終わり?」ってなるやつ、そんな夏だ。


バリウム。
これほど他人の言いなりになる機会もない。
笑っちゃうほど言いなり。

手紙を書こうと便箋を取り出せば、
昨夏の筆圧残る。

よし、出かけよう。