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books reminder, 『超新撰21』 その1

  • 2011/02/27(日) 19:46:30

『超新撰21』 セレクション俳人プラス
筑紫磐井/対馬康子/高山れおな=編 邑書林


『新撰21』の続編。

『新撰21』
2009年元旦現在40歳未満で2000年以前個人句集無し主要俳句賞受賞無しの俳人21名
『超新撰21』
2010年元旦現在50歳未満で2000年以前個人句集無し主要俳句賞受賞無しの俳人21名
要は10歳リミットを上げたのだ。

収録俳人一名につき、過去の全作品より自選主要100句、210字以内の作句信条、
210字以内の略歴および、近影写真から構成されているのも一緒。
21名の内、2名は公募枠で選抜決定したとのこと。


前回『新撰21』の時は一冊21名分を一回で紹介したが、読んだ分はさっさと紹介すべく
前半と後半に分けます。わりとじっくり読むので時間がかかるのだ。今回は前半、その1。

その1:種田スガル、小川楓子、大谷弘至、篠崎央子、田島健一、明隅礼子、
     ドゥーグル J.リンズィー、牛田修嗣、榮猿丸、小野裕三、山田耕司
その2:男波弘志、青山茂根、杉山久子、佐藤成之、久野雅樹、小沢麻結、
     上田信治、小川軽舟、柴田千晶、清水かおり

本の全体感は、ごった煮というか闇鍋。混ざり合わない味。
不味かったり美味かったり、食べるのは楽じゃない。
たまに食えないモノも入っている。

以下勝手な感想、好きな句抄出。
先入観を排すべく作句信条と略歴は実作拝読後に拝見。
本のつくりとしても作句信条や略歴や顔写真は後にした方が良いと思います。



□種田スガル

統御しきれない未消化のことば、発作的な宣言集。
気取った言葉で中身は実はあいだみつお、みたいな。敢えて一句。

  窓から魂乗り出し五月の空気を落ちる

□小川楓子

綺麗なスケッチ。きらいじゃないけど、なんとなく感満載。
上の空のリアリティ。

  清明に生まれてみどりの踵持つ

  肩口よりどつと吹き出すミモザかな

  濃紫陽花こころの堅きところより

  同じ名の子が叱られる聖夜かな

  そりかへる小鬼濃やか花柊

□大谷弘至

古風。ヨットがすきなのね。 
だいたい一息に流れてキレ薄っ!美しい説明文。

  囀りは大きな金の輪となりぬ

  春の蝶かろがろと影つれてゆく

  水槽の外をうかがふ虎魚かな

  風鈴や山もうごけと鳴りしきる

  ざくざくと露をこぼして青菜摘む

□篠崎央子

私の義母がカルチャークラブで水彩画を習っていて、絵日記帳を描く。
そういうものだと思えば、いいと思う。暖かな視線とユーモアと。

  黒々とうねる海あり心太

  磁石へと砂鉄飛び付く暑さかな

  少年はいつも空腹雲の峰

  月赤し都会は捨てるもの多き

  初秋刀魚女は光るものを恋ひ

  鍋の葱ぽかりと浮かぶ二日酔ひ

  鶏のどもりがちなる雪解村

  ハンカチを出すたび何かこぼれゆく

  年の瀬や目付きの悪しき魚を提げ

□田島健一

難解なメルヘン。例えばこの句。

  白鳥定食いつまでも聲かがやくよ

ほとんど意味不明。
でも、以下は好き。

  西瓜切る西瓜の上の人影も

  自動冷房青いさなぎになっている

  満月に眼のあり小学校の石

□明隅礼子

生活描写、スケッチ句。子どもはかわいいですね。
甘々の子ども俳句ばかりで疲れます。でも好きな句もあります。

  桃と言ふ口元のまた愛らしき

  星の夜のつづきのように身ごもりぬ

  小鳥来るはじめて話すことばかり

  思い出すことのはじめのチューリップ

  子を追って蟻の国まできてしまふ

  じゃんけんの一度で終る枯野かな

□ドゥーグル J.リンズィー

自然崇拝者である私の気持ちにジャストミート。
ダイナミズムとデリカシー。

  海に出て戻れば影に再会す

  花過ぎの兎を抱けば脈打てり

  アルバムへしづかに瀑布しまひけり

  夫婦喧嘩西瓜の種を吐くごとく

  花火終へ期待の闇のなほつづく

  海鳴りの棺の中も響きゐむ

  老木を空に戻しぬ大焚火

  殉教者の如く飛魚干されけり

  鮟鱇の吊るされて影持ちにけり

  銀河を跨ぐ蜘蛛が蛍を食ってゐる

  馬上より見上ぐ昴よ一家族

□牛田修嗣

だいたい下記のような説明文。

  向日葵と海と太陽照らしあふ

  ヨット着くはるけき国の旗かかげ

残念ながら既視感にあふれている。
敢えて以下一句。これにはカラフルな遠近感と動き。

  薔薇垣の上ゆく沖の豪華船

□榮猿丸

視点・対象は面白いが、絵日記。旧かなでなくてもいいと思うし。
コクトー、ランボー、ゴダール、クロサワ、ディラン、ストーンズ、スターリン、
ゴッホ、ゴーギャン、ヘミングウェイ。こういう固有名詞の使い方難しいですね。

  ダンススクール西日の窓に一字づつ

  蜜厚く大学芋や胡麻うごく

  いちまいの白布として寒波来ぬ

  ボブ・ディラン掛けよ蛙の夜なれば

□小野裕三

シュールですが、ぎりぎりこっち側に居る。
目付きはヤバイけど正気は保っている感じで好き。
メキシコ料理店以降は分裂病から神経症に症状の変化がみられるようです。

  貫きて五月を走る鉄路かな

  春の夢何万トンの空だろう

  B型の男だったか水中花

  林檎投げピンチランナー走りだす

  ペーパーバック海の匂いの信号機

  ひまわりが無伴奏で咲いている

  珍客の寝てばかりいる苔の花

  言い捨てて蝙蝠となる亭主かな

  あじさいが郵便局を開きけり

  パレードの終点は城桃の花

□山田耕司

妙な明るさと暗さ、というか不吉、グロテスク、だけどちょっと笑っちゃう。
時々キメラ嗜好。変態。

  どの鳩にありやくちびる初詣

  手をひつぱる鬼は夕焼け色だつた

  蝶群れて錆ゆく天にほかならず

  春の波ひとりは生きて運ばるる

  肩車姿見にぼくの首が無い

  木と生まれ俎板となる地獄かな

  春愁のいもむし二匹抱きあへり

  箸を逃げ骨に春昼あかるけれ

  御不浄の深さの春を跨ぎけり




以前に中原正也が言っていた事を思い出した。
文筆家などただの誇大妄想狂のエゴイストだ、と。
自分勝手な露出狂じゃなきゃやってられない、と。

どうせ露出するのなら、納得のゆく脱ぎ方にしたいとつくづく思った。

以上。 その2に続く。

海程 470

  • 2011/02/11(金) 19:48:47

海程 470 2011年2・3月合併号

今号は第十一回海程会賞の発表号であった。以下敬称略。
海程賞とは違う。どう違うのかよくわからないが、この一年間の同人投句で海程らしく
輝いていた方々が選考されるらしい。選考は金子兜太主宰をはじめ海程の各先生、
安西篤、伊藤淳子、塩野谷仁、武田伸一、佃悦夫、森下草城子、森田緑郎、山中葛子、
そして選考会司会は堀之内長一。甲乙つけ難いといいながら甲乙つけるところが流石
海程重鎮各位。受賞者3名中私は武藤暁美が好き。でも実は受賞者よりもむしろ候補者
の作品の方に私は魅かれる。月野ぽぽな!田中亜美!

《第十一回海程会賞 受賞作品抄》

稲葉千尋
 
 蛇掴みて仲間はづれと思ひけり
 
 気がかりは手ぶらなること冬夕焼
 
 またテロが頬に飯粒つけたまま

釈迦郡ひろみ

 抗えない闇なら添うよ不眠でも

 風を探しに車椅子の行列です

 夕陽拝みふと消える我山の向うに

武藤暁美

 こころのかたち赤蕪を厚く切る

 春耕の土塊うねり象形文字

 紫蘇をもむ終戦の日の空のいろ

 隠棲の沼番盃にも蛍

 折鶴のまず三角に原爆忌 

以上3名受賞者

《第十一回海程会賞 候補作品抄》

月野ぽぽな

 波打ち際は初夏の鍵盤指を置く

 母に添い寝雪の深井戸のぞくよう

 しゃぼん玉こころの速度かと思う

田中亜美

 息絶えし馬を焚火のごと囲む

 梨腐るやうなる欝をサルトルも

 白き鹿棲み水を乞ふ朝桜

水野真由美

 いつぽんの麦を証として眠る

 空を今出てゆく鳥や杜若

 どの道も家路ではなし花杏

黒岡洋子

 ギリシャ悲劇果つ銀漢は低く海へ

 凍蝶や一品格とも原点とも

 白魚の言葉遊びのよう些些と

横地かをる

 さりげなく雨を描く癖花卯木

 口中にすっぱい飴玉色鳥よ

 かなかなや母いて卵かけご飯

以上5名候補者

むむむ、受賞者の稲葉氏以外は、全て女性だ。
以下選考座談会の様子から。
 堀之内:・・・・・(候補者は)全員女性ですね。
 武田 :女性上位。
 金子 :女性上位だ。
 堀之内:しようがないですね。来年はぜひ男性陣にも奮闘
     していただきたいと思います。・・・・・



さて、拙句今号では嬉しいことに金子兜太先生の好作三十句に抄出いただいた。

 冬銀河グランドピアノに零れ落ち

毎回選を受けるたびにいろいろ考える。
これが選ばれるのか、と。あれでもそれでもなく、これが、と。

470
  けんかしちゃいけないふたり牽牛花
  冬の虹あなたの中にすでにあるもの
○ 冬銀河グランドピアノに零れ落ち


没「凍土に古い私が出土した」は自分では好きなのだが、きっとなんだこりゃって
感じなんだろうな。


それから、東京例会2011/1/22も行ってきた。今回も99句参加と大賑わいだった。
それにしても参加者は皆大先輩ばかりである。青年・壮年は一見して少ない。
気合を入れていかないと、先輩達にエネルギーを吸取られそうである。気をつけよう。

拙句

  新雪のくちどけちくり親知らず  あ

今回は3名の方からの選を頂戴して、前回(2選)より進歩したと思い、披講(選句発表)
ではとても喜んだのだが、金子兜太主宰からの評価は惨憺たるものであった。
「くちどけってのがよく分からんかった。なんだねくちどけって」以上である。
口溶けと書くべきだったか、それともくちどけは口溶けと承知で分からんとのご評価なのか、
分からん。分かりやすく作ろうと思う。

例会三賞の発表があり賞品が主宰の新刊「人間・金子兜太のざっくばらん」

会場の後ろのほうでも2割引で売ってるよ〜と司会の堀之内氏。
購入。もちろん、主宰にサインをねだっていただいたのは言うまでもない。


以上

pleasure vinyl, Curious Creature, Emi Meyer

  • 2011/02/05(土) 10:39:34

Curious Creature, Emi Meyer

ヘビロテ中。


先日TSUTAYAで1982年の『トロン』をレンタルしたらCDレンタル2枚無料券をもらって、
一枚はBill Evans TorioのWaltz for Debby、もう一枚は何にしようかなと迷っていたら
宣伝文句にスモーキーボイスと書いてあり、ジャケット写真の女性の顔と「スモーキー」
のギャップに惹かれ手にした一枚。

ピアノがいい。芯がある声。たどたどしく語る、みたいに歌う。
ジャズ・ボーカルのコーナーにあったものだからカバーアルバムかと思って聞いてみたら、
全曲オリジナル。女性ボーカルというよりシンガーソングライターじゃん。
ノラ・ジョーンズよりも優しくて、ロッド・スチュワートみたいな哀愁もあって、元ちとせ
みたいなこぶしがきいて、素直で懐かしいフォークソングであってみたり。



ニューアルバムが待ち遠しい。2011/3/9 release 『Suitcase of Stones』 Emi Meyer

CINRA Net
http://www.cinra.net/news/2011/01/24/153313.php
CD Journal
http://www.cdjournal.com/main/news/emi-meyer/36542


1982年の『トロン』は当時はCMがすごくかっこよくて僕の中では
「CG」=「トロン」=「テクノ」だった。
わくわくして借りてきたが、今見てみると既に前時代のものとなっていた。

で、2011年のトロンは音楽がDaft Punk!かっこいいぞーきっと!


ところで、1982年の『トロン』の音楽は Wendy Carlos。
シンセの神様松武秀樹氏、4人目のYMOとして初期YMOのサウンドプログラマをつとめた
松武氏がシンセサイザーに出会ったのはまさにこのWendy Carlos(当時は性転換前の
Walter Carlos)がMoogでBachを演奏したアルバム『Switched-On Bach』との邂逅から
であった。

お、脱線しすぎましたね、エミ・マイヤー好きです。

名盤 Waltz for Debbyには申し訳ない。

以上