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books reminder, 『ヘヴン』 川上未映子

  • 2010/10/24(日) 19:20:13

『ヘヴン』 川上未映子

先ほど読了。
この作品については、???な評価や感想や宣伝文句が煩くて、文庫になる
前だが、単行本で読んでみることにした。大したことは書いていないが、余計な
先入観にこれからの読書を邪魔されたくないと言う方は以下読まないで。

さて、彼女のこれまでの作品にあった詩のような文体はみられない(※1)。
苦もなく外国語に直訳できそうな素直な文体で世界の構築を試みた。
そして、ユリイカ2010年9月号のインタビューを踏まえて言えば(※2)、
川上未映子のもくろみは成功しているだろう。

すごく「意味」がわかりやすい。
でも、この小説から新たに知らされる「意味」などひとかけらもない。
それなのに、「意味」を語りたがるひとびとが多い。善悪がどうのとか、いじめの問題
がどうだとか、あげくコジマの独善が純文学ジャンルの独善だ、などとくだらない解釈
に恍惚とする輩もいたり、うんざりだ。そうした「意味」にとらわれる輩にはものもいわず
にそっと微笑む筆者がいることだろう。その時輩は二ノ宮になってしまっていることに
気づいていないからだ。

私は「意味」じゃなくて、イマージュを味わいたい。
たとえば「豪雨の中全裸で二ノ宮に対峙するコジマの光景」。21文字で私が説明
しても何の感動も湧かないだろう。意味ではないのだ。しかしこの21文字の光景
は夏の日の眩しさに目を閉じたあともまぶたの裏に揺らめく残像のごとく私の中に
今もある。そういう光景は一文で形成されない、『ヘヴン』の森を歩いてきたからこそ
こそ出くわす光景であり、だからこそ小説は面白いのだと私は思う。たとえば
マンディアルグのいかがわしい路地裏の夜のイマージュ、川端の透通る少女の
イマージュ、ベンヤミンの懐かしい記憶の風景のイマージュ・・・(どうやら小説に
限らないようだが)、そんなイマージュを想う時再びその書物のページを開けてみる。
そして何故にそのイマージュが感動的なのかを考察する過程に批評があると思う。

川上未映子は『ヘヴン』を産み落とした。それは成長するだろう。凛々しいかも
しれない、美しいかもしれない。幸運かもしれない、薄幸かもしれない。
川上未映子には子沢山であって欲しい。

(※1)PMS/『乳と卵』感想もご参照

(※2)PMS/Books Reminder『ユリイカ』2010年9月号 特集=10年代の日本文化のゆくえ


以上

朝顔の木 morning glory

  • 2010/10/24(日) 10:56:30

朝顔の木。裏庭の朝に青く蛍光している。

秋の季語。例えば

増田まさみ「朝顔や締めあう首のあべこべに」(※)

月野ぽぽな「折り癖のついた感情牽牛花」

加賀千代女「朝顔につるべとられてもらい水」


英語ではmorning gloryという。オアシスは何て歌ってたんだろう。
でも今の僕には、ビートルズのBecauseな気分。

because the sky is blue it makes me cry

朝顔が青いから、休日出勤はやめた。

ところでBecauseってヨーコが弾くピアノ『月光』をソファで聴いていたジョンがちょっとそれ
逆に弾いてみてって頼んで出来た曲。

さて、休みは休みと決めた事だし、珈琲でも淹れて、ベートーベンでも聞くか。

あ、朝顔の「木」ってのは嘘。レモンユーカリに絡みついた朝顔です。

(※)参考:増田まさみ句集『ユキノチクモリ』関悦史さんによるレビュ@俳句樹
http://haiku-tree.blogspot.com/2010/10/blog-post.html


以上

Pleasure vinyl, Symphonies Nos.2 & 3, Philip GLASS

  • 2010/10/23(土) 14:36:10

フィリップ・グラス 交響曲 第2番、第3番
ボーンマス交響楽団、マリン・オールソップ指揮
Naxos classic(CD)


このCDを聞きながら昼食を作っていたのだが、
第3番 第3楽章のバイオリンソロがはじまったところで、はっとして手が止まり鳥肌が立った。
何度かこれまでも聞いてきたが、私には晴れた土曜日の昼にオープンキッチンでリビングの
オーディオを聞くのが一番いいらしい。

第3楽章ではミニマルな通奏低音(コントラバスを弾くウッブーン、ウッブーン、ウッブーン・・)の
ベースラインもかなり猛毒)、その上に少しずつかたちを変えて変奏される主題に呪われそう
になるころ、通り魔的にバイオリンソロがはじまる。
切なさ満点の旋律がゆらゆらと様々にかたちを変えて奏でられる。

クレメールのシャコンヌを想いおこす。そして、
ジャパネットたかた高田社長のトークに響く緊張感や高揚感となめらかさを想いおこすのは
私だけだろうか。

以上

Books Reminder『ユリイカ』2010年9月号 特集=10年代の日本文化のゆくえ

  • 2010/10/11(月) 19:41:24

ユリイカ2010年9月号 特集=10年代の日本文化のゆくえ ポストゼロ年代のサバイバル

『神話が考える』刊行記念  10年代の文化の地平
東浩紀、福嶋亮大、濱野智史、黒瀬陽平、渋谷慶一郎、荻上チキ
のシンポジウムの様子が掲載されている。お、渋谷氏なんかもいるぞ、と思って期待して購入。
本日車中で読んだ。読後感「ァイタっつーくゥウゥゥーイタタタ・・・」
ちかごろ「切実すぎる」話をちらほら見聞きするのだが、こいつの中身もこれまた切実だ。
最後は金、金、金の話になっちまった。
いやいやあたりめぇだろよ、そりゃ切実にきまってるだろうよ、ゲイジュツだもん。
しかしこのぉ、切実ってぇのは、風流じゃぁございませんな。イタタ。
みんなが顔突合せんだものぉ、そん時にゃはなしの仕切りってぇーのが必要だよ。
おい、熊公このやろう、・・・(志ん朝風に)

1300円も出して『ユリイカ』を購入する私のような奇特な読者に失礼のないように取組んで
いただきたい、と文句のひとつも言いたくなるような、あまりにもグダグダすぎるシンポジウム
の内容を読んで、いやいや青土社は悪くない、悪いのは私の方で、またしても期待してしまっ
た己のふがいなさをこそ恥じるべきだと反省した。
それにしても、荻上チキというひと、私は知らんがコミュニケーションを話題にするわりには
コミュニケーションがへたくそというか、日本文化のゆくえじゃなくて、自分のゆくえとサバイバル、
って感じの発言、読者にみすかされるぞよ。
唯一の救いは、途中渋谷氏
「しかし、僕や黒瀬を呼んでおいてそんな話をしてもしょうがないでしょう?
福嶋君の本に政治性がないとというところから、やたらと政治の話になっているけれども(笑)。
もう少し実際の音楽や美術を含んだ創造と批評の関係などの話をしたいんだけど。」
※渋谷氏の(笑)は(苦笑)でしょうきっと。ごもっとも。
ところで『神話が考える』、すみません、私は読んでません。
このシンポジウムの様子を読んで買おうと思う人、いないと思うよ。

さて、特集=10年代の日本文化のゆくえ ではほかにもいくつかの論考やインタビューが掲載
されている。特筆すべきは、川上未映子「言葉の翼にのって」

 「わたしが一生をかけてたくさんの言葉を書く中で、なにか
  ひとつのイマージュが伝わればそれでいいと思ってます。」

インタビュー:川上未映子「言葉の翼にのって」 聞き手:前田塁
これ読むことができて、今日は良かった思うことにする。

ちなみに、増田聡「水に歴史はない」
話題も関心あるし飲み屋の会話みたいで好きです。
(でもユリイカ的にはこれでいいの?)



以上

海程 466

  • 2010/10/03(日) 19:26:12


海程 466には月野ぽぽな氏の現代俳句協会新人賞受賞作品の紹介があった。

月野ぽぽなさん大好きです。
それがフィクションであってもリアルな描写。観念的な言葉遊びや作為とは無縁。
なぜなら「私」が置き去りにされないから。
いつも詠む/読む人の手を引いて、あなたがいないとはじまらない、と言ってくれる。


●第28回現代俳句協会新人賞受賞作品

   ハミング        月野 ぽぽな


   蛇穴を出て青空の青沁みる

   ふくらはぎの深さに藤の花咲けり

   白木蓮ときには濁るため歩く

   ぶらんこの鉄に戦歴あるだろうか

   陽炎はとてもやわらかい鎖

   さんしゅゆの真昼は遠い風の地図

   鈴鳴らすように旅人汗をかく

   あめんぼう宇宙ぽろんとさざなみす

   短夜のグランドピアノ獣めく

   ピッチカート蛍ピッチカート蛍

   先すでに草になりたる髪洗う

   舌先の尖る泰山木の花

   夏の魚銀色よりも静かなり

   その中に崩落の音花カンナ

   泣くために溜めておく息夕花野

   手紙読む月の樹海をゆくように

   山里に霧の気配りゆきわたる

   母たちは朝顔色にほほえみぬ

   少年の扉やわらかキリギリス

   黄落す光が重たすぎるとき

   まひるまの淡き骨格秋しぐれ

   自らに逆らうかたち稲光

   爪で剥がした痕であり朝の月

   狼の目に中世の風ありぬ

   毛皮より短きいのち毛皮着る

   傷口に触れないように山眠る

   みずうみは凍てて翼の昏さかな

   春の鳥水平線をつまびくよ

   桜咲く乳房あることたしかめて

   佐保姫のハミングをするときは風



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一方で拙句466号海程集。ああ、SFW!

  薫風やカーテンふわり胸ふわり
  熱帯夜触れたる腕の冷たさと
○ 遠雷や横たう妻の足の裏

没 雷電雲の谷間の形相よ (雷電にライディーンとルビ)
  じっと見つジョッキの汗を凶報に



以上