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books reminder, 『新撰21』 セレクション俳人プラス

  • 2010/07/26(月) 22:41:36

books reminder, 『新撰21』 セレクション俳人プラス

ここのところ何かと忙しくて書きかけのまま放置されていたメモアップします。
ほんとは先週末に、と思ったけど急遽NABOWAのライブに行ったりして、
珍しくweekdayアップです。やればできるじゃん。
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『新撰21』 セレクション俳人プラス
筑紫磐井/対馬康子/高山れおな=編 邑書林


2009年元旦現在40歳未満で2000年以前には個人句集の出版および主要俳句賞
の受賞のない俳人を対象に、編者間の議論を経て選定した21名によるアンソロジー
である。収録俳人一名につき、過去の全作品より自選主要100句、210字以内の
作句信条、210字以内の略歴および、近影写真から構成されている。
また各俳人の末尾に俳人小論が付されている。巻末にはゲストに小澤實氏を迎え
て編者との4氏による合評座談会が掲載されている。

要は、若手俳人のアンソロジーだ。上のルールのため、あれ、あの人がいないぞ?
なんでこの人なんだ?、といった不満や疑問もあろうが、どうしても偏りが出てしまう
のは仕方あるまい。しかし、最近の輩をばあっと集めてざくっとレビューする、これ、
在りそうで無かった企画だと思う。近影写真載せないほうがいいと思うな、しかし。

ちょっと前に図書館で目についた本で『現代俳句ニューウェイブ』というのがあった。
 <いま、俳句が変わりつつある。新しい俳句の時代をきりひらく新世代作家8人集。
  書下ろし作品60句+自選作品150句+エッセイ。> 立風書房、1990年発売。
以下の各俳人のアンソロジーであった。大木あまり(1941生)、大西泰世(1949生)、
金田咲子(1948生)、田中裕明(1959-2004)、千葉皓史(1947生)、林桂(1953生)、
夏石番矢(1955生)、長谷川櫂(1954生)。
お〜、これはこれは『ニューウェイブ』だぜ。。。20年前の波じゃ。当時は皆30〜40代
の若手だろうが今や全員ベテランである。 やれやれ、と思っていたら『新撰21』を発見。

せっかくなので『新撰21』の各俳人に私の勝手な感想を述べて好きな句抄出します。
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と、この企画を思いついて読んでいるうちに、『現代詩手帖』の6月号が出た。
手にとってみれば<短詩型新時代>の特集。ぱらぱらめくっていると、

    「無風」ではなく 俳句逍遥?―ゼロ年代の俳人たちの作品を読む

と題して田中亜美(「海程」同人)さんが僕と同じような企画で記事を書いて
いるではないか!他のページも『新撰21』周辺の若手の記事満載である。
読まずに閉じて、古本で買うことにした。そしたらこの有様だ。密かに流行っている。
中古屋め足下を見おって!図書館で借りることにした。
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気を取り直して『新撰21』 好きな句(あれば)抄出。
掲載順にしかも足早に参ります。無論自らは棚上げして。

□越智友亮
 すっぱ〜い。
 好きな句ありませんでした。すみません。が、そういう時でも敢えて一句。

  妹の蝶になりきる天気かな

□藤田哲史
 So What?全部。
 またまたすみません。敢えて一句。

  泳がねど先生水着笛を吹き
 
□山口優夢
 お、やっときた。どれも真面目だなあ。

  あぢさいはすべて残像ではないか
  
  らふそくのくらさの夢のふくろふよ

□佐藤文香
 文学フリマ風即席ロマン。

  空蝉に指の湿りを移しけり
  
  太刀魚や遠き光を撥ね返し

  マフラーの匂ひの会話してをりぬ

□谷雄介
 ふう。苦い。意味不明。
 ごめんなさい。敢えて一句。

  上空やミサイルは雌犬となりぬ

□外山一機
 ああ、なんか暗い。
 ごめんなさい。敢えて一句。

  生前のひるすぎにゐて米洗ふ

□神野紗希
 女の子の日記。
 ごめんなさい。敢えて一句。

  天道虫死んではみでたままの翅
 
□中本真人
 オーソドックス上手。視点面白いが他人事?
 ごめんなさい。敢えて一句。

  流灯を置くてのひらの影浮ぶ
 
□睫克弘
 スマートすぎる?

  ストローの向き変はりたる春の風

□村上鞆彦
 ふつーです。
 敢えて一句。

  塗りたてのペンキを踏んで春の蠅

□冨田拓也
 ぎりぎりアウト?久しぶりに詩を感じつつも。
 敢えて一句。

  はるかより近づく蹠(あうら)蝶の昼


□北大路翼
 詩じゃないよね
 ごめんなさい、敢えて一句。

  夕立や女に戻るアスリート

□豊里友行
 沖縄すぎ。。。
 ごめんなさい、敢えて一句。

  ランドセル揺られて並ぶ原潜

□相子智恵
 平和な日常。上手な日本語。
 ごめんなさい、敢えて一句。

  まゐつたと言ひて楽しき夕立ちかな

□五十嵐義知
 美しい。好きです。が、美しいのみ。

  みづうみの月に色なき風寄する

  年つまり港の路地の狭きかな

□矢野玲奈
 平和なセンチメンタル。おセンチに堕すことなきよう。

  春の海渡るものみな映しおり

  石榴の実秘密こぼるるごとく裂け

  あいさつの朱唇けだるき藤の昼

  亀鳴くや雨美しき交差点

  夏服にしみこんでゆく雨の音

  水仙や前だけを見て疑はず

□中村安伸
 とりあわせの妙、無し。だいたい意味不明。
 ごめんなさい、敢えて二句。たまにぎりぎりのもある。

  私からモスクワまでの擦りガラス
 
  ひとりだけ菌のやうに白く居り

□田中亜美
 緊張と弛緩のエロス。

  はつなつの櫂と思ひし腕かな

  抽象となるまでパセリ刻みけり

  愛のあと猟銃のあと青無花果

  言い澱むことばを梢に白木蓮

  うるむのはやはらかき虚無かたつむり

  胎内は河原の白さ日傘差す

  焚火番しようか生きてゐるあひだ

  自我いつかしづかな琥珀霜の夜

  白百合の臓腑あらはに咲きにけり

□九堂夜想
 言葉の外側へ誘う強い意志。意味不明だけどカッコいい。

  春深く剖(ひら)かるるさえアラベスク

  占方の街を劓(はなき)る鳥影や

  遠街の空をにれかむ太陽や

  山脈(やまなみ)や墨の上がりを化生して

  鳥過ぎて野には呻(すた)めく石柱

  まむしゆび月の脂を啜らんか

  オルガンを落下するみな薔薇擬き

□関悦史
 生活臭すぎないのは好きです

  Ω(をはり)からまたI(われ)を出す尺蠖よ

  まぼろしの館の中の水着かな

  小鳥来て姉と名乗りぬ飼ひにけり

  人類に空爆のある雑煮かな

□鴇田智哉
 平易な言葉で少し異次元にいざなう。
 九堂夜想みたいに漢和辞典活躍しまくらない。

  にはとりの煮ゆる匂ひや雪もよい

  春雨に近づけば日の匂ふなり

  逃水をちひさな人がとほりけり

  うたごゑを口がうたへば孑孒も

  ひなたなら鹿の形があてはまる

  ほそい木に巻きつく風が神無月

  はりがねの塔を見上げてゐる毛皮


どうもおつかれさまでした。
以上です。

pleasure vinyl, 森山良子 『さとうきび畑』

  • 2010/07/24(土) 12:31:20

pleasure vinyl, 森山良子 ゴールデン・アルバム(PHILIPS 1973)

『さとうきび畑』ヘビロテ中。


中古で入手したLP。

この季節『さとうきび畑』が胸をうつ。

かつて『今日の日はさようなら』にキャンプファイヤー
をかこむぼくらがいた。

SIDE-1
1.この広い野原いっぱい
2.ふたつの手の想い出
3.恋はみずいろ
4.今日の日はさようなら
5.愛する人に歌わせないで
6.小さな貝がら
7.雨上がりのサンバ

SIDE-2
1.禁じられた恋
2.まごころ
3.悲しき天使
4.夜明けの子守唄
5.さとうきび畑
6.恋人

森山良子の『恋はみずいろ』は不思議な涼をよぶ


以上

books reminder 『食卓の音楽』(その2)

  • 2010/07/24(土) 11:30:53

ご期待に応えてその2。


第一歌集『食卓の音楽』

 菜の花のおそろげもなき黄なる丘 なだるる末に海盛りあがる
 食パンの白い内部を通過するパン切りナイフむずがゆい春
 飛翔する明日を断たれし小鳥食えば繊くてまろき骨の関節
 失われし森の夜明けにひびきたるガラスの翅の蝉とおもえり
 かなしみよりもっとも無縁のところにてりんごの芯が蜜を貯めいる


第二歌集『パン屋のパンセ』
 
 晴れ上がる銀河宇宙のさびしさはたましいを掛けておく釘がない
 透明な秋の空気はフラスコのなかでフラスコのかたちをしている
 仰向けに逝きたる蝉よ仕立てのよい秋のベストをきっちり着けて
 音荒く雨ふる夜明け胸という一まいの野を展げていたり
 バレリーナみたいに脚をからませてガガンボのこんな軽い死にかた



五つずつ、僕の好きなのを抄出。
むずかしいことばづかいはなく、ひらがなづかいもまろやかに
何気ないものごとをすくい上げやさしくいのちに触れるうた。

ではその3はそのうちにまた。

海程 463、464

  • 2010/07/24(土) 10:22:56

464号で初めて海程集 <好作三十句> 金子兜太・抄出
に抄っていただいた。



 春一番吹っとばされぬ現あり



海程 464 投句

○春一番吹っとばされぬ現あり
 すこしずつ熱りを放つ桜五分
 なごり雪見知らぬ空に雲早し

 
海程 463 投句

 解けぬまま食めり誤解と豆御飯
○内腿に氷柱を解かす渇きあり
 似顔絵を描いてみて消す春休み



僕としては選をはずれて掲載されなかった以下も好きだった。

 草結び陽だまりに蜂の羽音のみ
 貪欲の茉莉花は肢赤蕾す
 (どんよくのまりかはてあしせきらいす)


以上

books reminder 『食卓の音楽』 (その1)

  • 2010/07/15(木) 23:21:40

私はどうしても、第一歌集を読んでみたくなったのだ。

杉崎恒夫氏の第一歌集である『食卓の音楽』(1987年刊)を大学図書館で全句書き写した。
絶版で売っていないのだ。古本にもない。
時間がない中での作業であったため鑑賞は後回しで腱鞘炎一歩手前の筆写となった。

A.O.氏より『パン屋のパンセ』が素敵だと紹介を受けて、早速Amazonに行くも既に売り切れ。
直接出版社へ連絡を入れて入手した。杉崎恒夫氏の第二歌集ということであった。
みずみずしい、という形容詞は自然に口をついて出た。90歳と聞いてさらに驚いた。
後で知ったが、すでに帰天されていた。

例えば以下のようなうたうた。

第一歌集『食卓の音楽』
 ティ・カップに内接円をなすレモン占星術をかつて信ぜず
 落ち蝉の翅の網目に刻まれし夏つかぬまの光の記憶
 かなしみは生命の錘(おもり)子午線を越えて傾くオリオン星座
 わだかまる集合無意識 暗緑のブロッコリーは丸ごと噛じる
 楽器にはない進化論いつの世もチェロはやさしいびてい骨もつ

第二歌集『パン屋のパンセ』
 ゆびというさびしきものをしまいおく革手袋のなかの薄明
 卵立てと卵の息が合っているしあわせってそんなものかも知れない
 大文字ではじまる童話みるように飛行船きょうの空に浮かべり
 星空がとてもきれいでぼくたちの残り少ない時間のボンベ
 止まりたいところで止まるオルゴールそんなさよなら言えたらいいのに

次回(その2)をもうけよう。さらにいくつか歌をひいてご紹介したい。